弥生時代も長い
諸説ありますが弥生時代の始まりは今から約3,000年前とされています。つまり紀元前1,000年頃に弥生時代が始まりました。考古学の新しい発見によって弥生時代の始期は年々遡っており、今後もさらに遡る可能性があります。弥生時代が終わるのが今から約1,700年前頃と考えられていますので約1,300年間、弥生時代が続いていたと考えて良いでしょう。
日本の古代史で有名な大化の改新から現在までの期間が約1,300年であることを考えると弥生時代もかなり長い期間続いていたと言えます。
当然、縄文時代ほどではないにしても、弥生時代が日本の歴史に与えた影響は非常に大きなものがあったといえます。
弥生時代の研究資料
弥生時代も縄文時代に引き続き、同時代の文字で書かれた史料は残っていません。よって基本的には考古学による研究をベースに考える必要があります。また、後世に編纂された史料として『古事記』と『日本書紀』(総称して記紀)があります。記紀が編纂されたのは奈良時代ですが、記紀に記された古代の天皇が統治した期間を遡っていくと初代の神武天皇が即位したのが紀元前660年になります。かつては紀元前660年は縄文時代と考えられていたため、記紀の記す古代天皇の記述は誤りだと考えられていました。しかし、現在は紀元前660年は弥生時代となっており、後述するように弥生時代に政治権力が誕生したとされていることを考え合わせると神武天皇の即位したとされる時期に何らかの政治権力が誕生した可能性はあると思います。
弥生時代の特徴
弥生時代の特徴は3つあります。弥生時代の特徴その1は水稲稲作の開始です。なぜ、あえて稲作に「水稲」をつけるのかというと稲作自体は縄文時代にも行なわれていた形跡があるからです。縄文時代に栽培されていた稲は陸稲といわれるもので水田で栽培する稲ではありませんでした。現在、私たちが想像する水田による稲作は弥生時代から始まりました。そのため水稲稲作というのです。水稲稲作の方が陸稲よりも生産性が高いです。さらに鉄器の使用が始まることで生産性はさらに上がっていきました。
次に弥生時代の特徴その2は政治権力の誕生です。水稲稲作の普及や鉄器の使用によって生産性が向上し、一定の富が蓄えられるようになったことで政治権力が誕生したと考えられます。水稲稲作にしても鉄器の製造にしても一人ですべての工程を行なうことは難しいので大勢の人々が協力する必要が出てきます。さらに水稲稲作を行なうための水資源の確保、鉄器の製造のための砂鉄や木材の確保等、それぞれのプロジェクトを行なうための物資の獲得も必要になってきました。そして、こうしたプロジェクトによって生産した富の分配も必要になります。このようなことから大勢の人々を率いるリーダー、政治権力が誕生していきました。
最後に弥生時代の特徴その3は戦争の始まりです。上述した必要資源の確保は近隣の人々との軋轢をうむことになります。自分たちが必要としている資源は近隣の人々も必要としているからです。さらに生産性の向上によって積み上げられた富をめぐっても争いが発生したと考えられます。弥生時代は環濠集落跡や高地性集落のような防衛設備が整った遺跡が多数発見されています。弥生時代ほど多くの防衛施設が造られたのは戦国時代くらいです。弥生時代は古代の戦国時代と言っても過言ではないでしょう。
シナ大陸の歴史書である『三国志』には弥生時代末期の日本列島をさして「倭国大乱」と記しています。日本の歴史は1万年以上の縄文時代のあとに約1,300年間の弥生時代という戦国の世を経験した上で始まるのです。