前回まで2回にわたって年次有給休暇についてご紹介してきましたが今回は3回目です。
前回までの分は↓にリンクを貼っておきますのでご覧ください。
「年次有給休暇について②~年次有給休暇はどのくらいもらえるか?~」
さて今回は年次有給休暇はいつ取得できるのかを「時季指定権」と「時季変更権」によってご説明します。
まずは条文を見ていきます。
「使用者は、前3項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。」
以上の条文から労働者には時季を指定して有給休暇を請求する「時季指定権」があり、一方で使用者には、労働者が指定した時季に有給休暇を与えることによって事業の正常な運営を妨げる場合という条件付きで「時季変更権」があることがわかります。
よって、使用者が有する「時季変更権」は労働者による「時季指定権」の行使があって初めて行使することができるといえます。
また、時季の変更は事業の正常な運営を保持するために必要な場合は、年度を超えて変更することも可能です。
労働者が派遣労働者の場合の「時季変更権」の行使に関しては、事業の正常な運営が妨げられるか否かの判断は派遣元の事業について判断します。
ここまでの話をまとめると、年次有給休暇の成立は労働者が有する年次有給休暇の日数の範囲内で具体的に年次有給休暇の始期と終期を特定して時季を指定し(「時季指定権」の行使)、使用者による「時季変更権」の行使がない場合に成立します。
また、年次有給休暇が成立すると、時季指定された日の労働義務が消滅します。つまりお休みになるということです。
ここでは育児休業と年次有給休暇の関係について2パターンご紹介します。
使用者は年次有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならないとされています。
しかし、これは訓示規定又は努力義務規定とされているため、罰則は設けられていません。ただし、労働者の仕事と生活に責任を持つ立場の事業主であるならばこの規定の穴を利用するようなことはしてほしくないなと思います。
以上、今回は年次有給休暇の「時季指定権」と「時季変更権」についてご紹介しました。
次回は「年次有給休暇中の賃金について」ご紹介します。