割増賃金とは?
割増賃金とは使用者が労働者に時間外労働や休日労働をさせた場合、深夜に労働をさせた場合に通常の賃金よりも割増された賃金を支払うことです。
割増賃金の目的は大きくは次の2つあります。
①法定労働時間の原則の維持。
②過重な労働に対する労働者への補償。
ここでも確認しておきたいのは労働基準法上求められているのはあくまでも法定労働時間を超えて労働させた場合や法定休日に労働させた場合が対象となっていることです。
各事業所で定めた所定労働時間を超えて労働させた場合や所定休日に労働させた場合には労働基準法上、割増賃金の必要はありません。
もちろん就業規則等で所定労働時間を超えた労働や所定休日に労働させた場合に割増賃金を支払うことを規定している場合には割増賃金を支払う必要があります。
割増賃金の率
それでは割増賃金は通常の賃金に比べてどのくらい割増する必要があるのでしょうか。まずは条文を見ていきましょう。
法37条1項
「使用者が、第33条又は前条第1項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。」
法37条2項
「前項の政令は、労働者の福祉、時間外又は休日の労働の動向その他の事情を考慮して定めるものとする。」
労働基準法第37条1項と2項を見ると割増賃金の率は2割5分~5割の範囲内で政令で定めなくてはならず、その政令を定める際には労働者の福祉と時間外・休日労働の動向等の事情を考慮して定めることになっていることがわかります。
深夜業の割増賃金
次に深夜業の割増賃金についての条文も見ていきます。
法37条3項
「使用者が、午後十時から午前五時まで(厚生労働大臣が必要であると認める場合においては、その定める地域又は期間については午後十一時から午前六時まで)の間において労働させた場合においては、その時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の二割五分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。」
労働基準法第37条3項では深夜業の定義と深夜業をさせた際に支払うべき割増賃金の率について規定しています。
深夜業は原則として午後10時~午前5時までの労働です。また、深夜業の割増賃金の率は2割5分以上とされています。
また、時間外労働や休日労働の規定が適用されない労働基準法第41条該当者についても深夜業の割増賃金は支払わなくてはいけません。
具体的な割増賃金の率
ここまで確認してきた労働基準法第37条1~3項の条文では割増賃金の率についてはある程度の範囲を規定していました。それでは現在、具体的な割増賃金の率はいくつになっているのでしょうか?
- 時間外労働(月60時間以下) 25%以上
- 時間外労働(月60時間超え) 50%以上
- 休日労働 35%以上
- 深夜業 25%以上
ここで規定されているパターンが重なった場合には、それぞれの率を足した率になります。
例えば、時間外労働が深夜に行われた場合には(25%以上+25%以上で)50%以上の割増賃金を支払う必要があります。
また、時間外労働が1ヵ月あたり60時間を超えた場合の割増賃金の率50%以上は当面の間、一定の中小事業主の事業には適用されません。
割増賃金の計算について
割増賃金の計算方法は次の通りです。
- 時給制の場合 時給×割増賃金の率
- 日給制の場合 日給÷1日の所定労働時間数×割増賃金の率
- 月給制の場合 月給÷1ヵ月の所定労働時間数×割増賃金の率
- 請負制の場合 賃金総額÷総労働時間数×割増賃金の率
また割増賃金の計算について一定の手当等は計算の基礎に参入しないことになっています。条文を見てみましょう。
法37条4項
「第1項及び前項の割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない。」
その他厚生労働省令で定める賃金には臨時に支払われた賃金や1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金などがあります。
最後に念のため記載しますが、割増賃金を支払う際は通常の賃金も支払う必要があります。例えば、時給1,000円の労働者が時間外労働を1時間した場合には、(1,000円+1,000×25%=)1,250円の賃金を支払う必要があります。
以上、今回は割増賃金についてご紹介しました。