労働者は奴隷ではない③~強制貯蓄の禁止~

労働基準法第18条~強制貯蓄の禁止等~

今回ご紹介する労働基準法第18条は会社側が労働者を雇う際に強制的に社内貯蓄をさせるようなことを禁止する他、労働者の委託を受けて社内貯蓄する際のルールが規定されています。

強制貯蓄の禁止

法18条1項

「使用者は、労働契約に付随して貯蓄の契約をさせ、又は貯蓄金を管理する契約をしてはならない。」

労働基準法第18条の1項で注意するべきは社内貯蓄の契約が「労働契約に付随して」行われるかどうかです。

社内貯蓄の契約が「労働契約に付随して」行われるということは労働者が自由な意思で社内貯蓄をすることをやめることができなくなる恐れがあるということです。

任意貯蓄

社内預金と通帳保管

使用者は労働者の委託を受けて労働者の貯蓄金を管理することができます。管理の方法は「社内預金」と「通帳保管」の2種類があります。

「社内預金」とは、使用者自身が貯金を受け入れて直接貯蓄金を管理する方法です。

一方「通帳保管」とは使用者が受け入れた貯金を労働者名義で金融機関等に預入し、その通帳や印鑑を使用者が保管する方法です。

社内預金・通帳保管両方に共通すること

法18条2項

「使用者は、労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理しようとする場合においては、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、これを行政官庁に届け出なければならない。」

法18条3項

「使用者は、労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理する場合においては、貯蓄金の管理に関する規程を定め、これを労働者に周知させるため作業場に備え付ける等の措置をとらなければならない。」

法18条5項

「使用者は、労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理する場合において、労働者がその返還を請求したときは、遅滞なく、これを返還しなければならない。」

以上の労働基準法第18条2項、3項、5項は社内預金の場合であっても通帳保管の場合であっても使用者が取らなくてはいけない措置です。

労働基準法第18条2項は労使協定の締結及び所轄労働基準監督書への届け出。

労働基準法第18条3項は貯蓄金管理規程を定め、労働者に周知すること。

労働基準法第18条5項は労働者が請求した場合には貯蓄金を返還することを定めています。

社内預金の場合は利子をつけなければいけない

法18条4項

「使用者は、労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理する場合において、貯蓄金の管理が労働者の預金の受入であるときは、利子をつけなければならない。この場合において、その利子が、金融機関の受け入れる預金の利率を考慮して厚生労働省令で定める利率による利子を下るときは、その厚生労働省令で定める利率による利子をつけたものとみなす。」

具体的には年5厘以上の利率による利子をつける必要があります。

貯蓄金管理の中止命令

法18条6項

「使用者が前項の規定に違反した場合において、当該貯蓄金の管理を継続することが労働者の利益を著しく害すると認められるときは、行政官庁は、使用者に対して、その必要な限度の範囲内で、当該貯蓄金の管理を中止すべきことを命ずることができる。」

ここでいう「前項の規定」とは労働基準法第18条5項の労働者の請求があった場合には貯蓄金を遅滞なく返還するという規定です。

また「行政官庁」は具体的には所轄労働基準監督書長のことです。

法18条7項

「前項の規定により貯蓄金の管理を中止すべきことを命ぜられた使用者は、遅滞なく、その管理に係る貯蓄金を労働者に返還しなければならない。」

労働基準法第18条6項により、所轄労働基準監督書長から貯蓄金の管理中止命令を受けた場合はその貯蓄金を労働者に返還しなければいけません。