今回は賃金支払5原則のうち、労働基準法第24条1項に規定される賃金の通貨払いの原則について少し詳しくご紹介します。
賃金は通貨で支払わなければいけません。なぜなら現代社会において通貨が最も価値が安定しているものだからです。
日本でも江戸時代の御家人の給料は米で支払われていました。その結果、米が豊作の年は米価が下がって御家人の生活は困窮し、米が不作の年は米価が上がって生活にゆとりがでる状況でした。
賃金の現物給与(この場合では米)にはこうした問題がありました。同じように働いて同じように賃金の支払を受けてもそのときの現物の価格によって生活の安定がそこなわれるのではいけません。
こうした問題を解決する方法が賃金の通貨払いの原則です。
しかし賃金の通貨払いの原則にも例外が認められています。具体的には次の2パターンに該当した場合は賃金を通貨以外のもので支払うことができます。
①法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合。
②一定の賃金について確実な支払の方法で一定のものによる場合。
さらに①と②を詳しく見ていきます。
平成30年11月現在で法令で定められているものはありません。
労働協約に定めることによって通勤定期乗車券のような現物給与を支払うことができます。また現物給与による支払ができるのは労働協約の適用を受ける労働者に限られますのでご注意を。
このパターンで支払う場合には労働者の同意を得る必要があります。具体的には次のような場合です。
1、賃金及び退職手当を労働者が指定する銀行・郵便局等の金融機関に対するその労働者の預金または貯金への振込み。
2、賃金及び退職手当を労働者が指定する金融商品取引業者(第1種金融商品取引業を行うものに限る)に対するその労働者の預り金への払い込み。
3、退職手当を銀行振出の小切手・銀行支払保証小切手、またはゆうちょ銀行が行う為替取引に関し負担する債務に係わる権利を表章する証書を交付する方法。
一番身近なことは労働者名義の銀行預金への振込みではないでしょうか?こうした時には労働者の同意を得る必要があることにご注意下さい。