労働基準法第65条では妊娠中の女性労働者を保護する規定があります。
今回も条文を見ながら確認していきましょう。
「使用者は、6週間(多胎妊娠の場合にあつては、14週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。」
労働基準法第65条1項は産前休業についての条文です。
まず、出産当日は6週間(多胎妊娠の場合にあつては、14週間)に含まれます。
この条文における「出産」とは、妊娠4ヵ月以上(85日以上)の分娩のことで、正常分娩だけでなく早産・流産・死産も含まれます。
なぜ、4ヵ月以上が85日以上なのかというと4ヵ月以上ということは4ヶ月目も含まれます。そしてここでは1ヵ月を28日で計算することになっています。よって{28日×3ヵ月=84日}が経過した4ヶ月目の初日が85日ということになるのです。
また「女性が休業を請求した場合においては」という条件がついていることから、女性が請求しなければ出産日まで就業させてもかまわないということになります。
「使用者は、産後8週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後6週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない。」
労働基準法第65条2項は産後休業について規定されています。産前休業との違いを比較しながら見ていくと分かりやすいです。
まず原則として、「使用者は、産後8週間を経過しない女性を就業させてはならない。」とされています。つまり産前休業とは違って女性が請求するか否かは関係なく産後8週間は就業禁止ということです。
ただし、例外として「産後6週間経過」+「医師が支障がないと認めた業務に就く」の要件を満たすことによって、女性労働者を就業させることができます。
よって労働基準法第65条2項をまとめると産後6週間は絶対に就業禁止、産後7~8週間にについては原則就業禁止だが、「医師が支障がないと認めた業務に就く」場合には就業できるということになります。
いつも予定日に出産できるわけではなく、大抵の場合は予定日の前後にずれると思います。出産日が予定日からずれた場合には産前産後休業はどのような扱いになるのでしょうか?
このような場合には、産前休業の日数で調整されます。例えば出産予定日よりも1週間遅れて出産した場合には産前休業が7週間になるということです。
一方で産後休業はどんな時でも上記の労働基準法第65条2項の通りの日数になります。
「使用者は、妊娠中の女性が請求した場合においては、他の軽易な業務に転換させなければならない。」
労働基準法第65条3項は妊娠中の女性の業務内容についての条文です。
こちらも「妊娠中の女性が請求した場合」という条件付きで「他の軽易な業務に転換させなければならない。」とされています。
ただし、他に軽易な業務がない場合には、新たに軽易な業務を創設して与える必要はありません。そして、妊娠中の女性が転換すべき業務を指定せず、かつ、客観的に見て他に転換すべき軽易な業務がない場合に、やむを得ず休業する場合でも休業手当を支払う必要はありません。
以上、今回は妊娠中の女性労働者の保護について規定した労働基準法第65条についてご紹介しました。