労働基準法においては労働関係の当事者を労働者と使用者の2つに分けて規定しています。
そして労働関係においてはどちらかというと弱者である労働者の権利を強者である使用者から守るという立場で労働基準法は制定されています。
今回は労働基準法を理解する上で基礎となる労働者と使用者の定義についてご説明します。
「労働基準法で労働者とは、職業の種類を問わず、事業に使用される者で賃金を支払われる者をいう。」
ここでいう「事業に使用される」とは、使用者の指揮命令を受けて労働力を提供することです。そしてその労働の対償として使用者から「賃金を支払われる者」が労働基準法が定義する労働者となるのです。
少し専門的な言い方をすると使用者との間に「使用従属関係」がある者ということになります。
「労働基準法で使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。」
ここでいう「事業主」とは、個人事業であれば個人事業主個人のことをいいますが、法人の場合は法人そのもののことであり、代表取締役などの個人のことではありません。
法人の代表取締役などは「事業の経営担当者」にあたります。
また労働基準法の定義する使用者は「事業主」や「事業の経営担当者」だけではありません。
「その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者」も使用者に含まれます。したがって、人事部門や総務部門の長なども労働基準法上は使用者となる可能性があるわけです。
こうして労働者と使用者を定義するとどちらに該当するのか微妙な人が出て来ることがあります。一昔前にはファーストフード店などでいわゆる「名ばかり店長」が問題になったことがありました。こうしたケースはどうなるのでしょうか?
労働基準法では、使用者に該当するかどうかは「実質的な権限」が与えられているか否かが判断材料となります。
そのため、形式上は部長や店長などの役職を与えられていたとしても「実質的な権限」が与えられておらず、単に上司の命令の伝達者にすぎない場合は使用者には該当しないということです。