労働基準法では基本的に労働契約が身分的拘束に繋がらないようになっています。今回ご紹介する労働基準法第17条に規定する前借金相殺の禁止もその1つです。
「使用者は、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない。」
この労働基準法第17条でいう「前借金」とは、労働することを前提として労働者に前渡ししておく金銭のことで就業後に労働者の賃金から差し引かれるものをいいます。
この「前借金」の性質を考えると、先に金銭を受け取っている以上、労働者は自由な意思を持って労働契約を解除することができなくなる恐れがあります。
借りた金銭を返すまでは身分的拘束を受けるということです。そうしたことを防ぐための条文が労働基準法第17条なのです。
そのため、労働者が使用者から人的信用に基づいて借りた金銭などで明らかに身分的拘束を伴わないものは、労働基準法第17条でいう「前借金その他労働することを条件とする前貸の債権」にはあたりません。
また労働者の自由意思による賃金の相殺も労働基準法第17条違反にはなりません。