労働基準法は古い法律です。その労働基準法第94条では事業の付属寄宿舎の生活の自由と自治について規定されています。
それでは寄宿舎とは何でしょうか?
何となく寄宿舎という字面を見ると雰囲気は伝わってきますがここで正確に適宜しておきましょう。
まず事業に付属するということは、事業経営の必要上、事業の一部として設けられているものです。
寄宿舎とは、常態として相当人数の労働者が宿泊し、共同生活の実態を備えるもののことです。
つまり、事業の付属寄宿舎とは、「事業の経営の必要上、事業の一部として設けられている常に相当人数が宿泊して共同生活をしているもの」ということになります。
よって、事業の付属寄宿舎は社宅やマンションなどを会社が借り上げて労働者に貸し出すような借り上げ社宅とは違います。
さて労働基準法に事業の付属寄宿舎についての規定が設けられているということは、労働基準法に規定されなくてはいけないような、まずい実態があったことを物語っています。
具体的には寄宿労働者の私生活の自由が使用者の不当な干渉によって侵害されるということがたびたび起きていました。
そのため、使用者の侵害行為を禁止するために労働基準法第94条が生まれました。
それでは早速、労働基準法第94条の条文を見ていきましょう。
「使用者は、事業の附属寄宿舎に寄宿する労働者の私生活の自由を侵してはならない。」
まず、労働基準法第94条1項は読んだ通りです。
今時労働者の私生活の自由を侵すような職場に人は集まりません。もっともそんなことを言うなら、事業の付属寄宿舎というもの自体がもはや絶滅危惧種ですが…。
「使用者は、寮長、室長その他寄宿舎生活の自治に必要な役員の選任に干渉してはならない。」
労働基準法第94条2項は寄宿舎の役員の選任に使用者が干渉することを禁止しています。
ということは、かつては寄宿舎の寮長などを使用者が選任して、寄宿労働者の私生活を管理していたということでしょうか。何だかおそろしい話です。
以上、今回は寄宿舎生活の自由と自治についてご紹介しました。