労働基準法第13条他~労働契約について~

労働基準法違反の労働契約

労働基準法は労働条件の「最低基準」を定めた法律です。

それではその「最低基準」を下回る労働条件で労働契約を締結した場合はどうなるのでしょうか?

法13条

「労働基準法で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となった部分は、労働基準法で定める基準による。」

この条文で重要なことは「労働基準法で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約」について、その労働契約そのものを無効にする訳ではないということです。

この条文では「労働基準法で定める基準に達しない」部分のみが無効となり、それ以外の部分は有効です。

そして無効となった部分については「労働基準法で定める基準」まで引き上げることとされています。

つまり、どんなに酷い労働条件で労働契約を結んでしまったとしても、労働基準法で定める労働基準よりも酷い労働条件で働かされることはないということです。

労働契約の期間~長期に労働者を縛ることはできない~

労働基準法では労働契約の期間に上限を定めています。

その理由は労働者が会社を辞めたくても辞められないようにするために長期の労働契約を結ぶことを防ぐためです。このあたりの条文は労働基準法制定当時の労働環境を垣間見ることができるような気がします。

法14条1項

「労働契約は、期間の定めのないものを除き、一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは、3年を超える期間について締結してはならない。」

労働基準法に定める労働契約の期間の上限は原則3年です。

また例外として「一定の事業の完了に必要な期間を定めるもの」は3年を超えることができます。具体的には建設工事などを想定しています。3年を超える場合であっても建物等が完成するまでの期間の労働契約を結ぶ場合は労働基準法第14条違反になりません。

労働契約期間の上限の例外~上限が5年となるパターン~

次の2パターンに該当する場合は労働契約の期間の上限が「5年」となります。

①専門的な知識、技術又は経験であって高度のものを有する労働者(当該高度の専門的知識等を必要とする業務に就くものに限る。)との間に締結される労働契約。

②満60際以上の労働者との間に締結される労働契約。

①の( )の中に書いてあることは高度の専門的知識等を有する労働者であっても高度の専門的知識等とは関係ない業務に就く場合には労働契約の上限が5年にならないということです。

専門的知識等であって高度のものとは?

構成労働大臣が定める基準に該当するものとされており、具体的には次の2つに該当するものです。

①博士の学位を有する者・「公認会計士、医師、歯科医師、獣医師、弁護士、一級建築士、税理士、薬剤師、社会保険労務士、不動産鑑定士、技術士又は弁理士」の資格を有する者・「ITストラテジスト試験、システムアナリスト試験又はアクチュアリーに関する資格試験」に合格した者・「システムエンジニアやデザイナー」の業務に就こうとする者(一定年数以上の従事経験を有する者に限る)。

②労働契約期間中に支払われることが確実に見込まれる賃金が年間換算で「1,075万円」を下回らない者。