現代では労働者を強制的に働かせてはいけないことは常識です。
しかし、労働基準法が制定された当時は必ずしもそうではなかったことの証左となる労働基準法第5条をご紹介します。
「使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によって、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。」
この条文を読むと「かつてはそんなことがあったのか!?」と衝撃を受けます。
条文になる「その他」には「長期労働契約」「賠償額予定の契約」「前借金契約」「強制貯蓄」等が含まれるとされています。
こうした不当な手段を用いて労働者の意思を抑圧し、自由な発現を妨げることにより労働を強要することが禁止されています。
この場合は労働を強要することが禁止されているので現実に労働をしていなくても労働基準法第5条違反となります。
労働基準法第5条違反は「1年以上10年以下の懲役又は20万円以上300万円以下の罰金」という労働基準法で最も重い罰則が課せられています。
この条文は他人の就業に介入して利益を得る中間搾取を禁止しています。
中間搾取と労働者派遣の違いにも気を付けながら確認していきます。
「何人も、法律に基づいて許される場合の他、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない。」
まず「何人も」とは個人、団体、私人も公人も含まれます。どんな肩書きにおいても労働基準法第6条違反に問われるということです。
次に「法律に基づいて許される場合」とありますが、ここでいう法律とは「職業安定法」と「船員職業安定法」のことです。これらの法律で許される範囲であれば「他人の就業に介入して利益を得て」も労働基準法第6条違反にはなりません。
ただし、職業紹介等にあたって「職業安定法」と「船員職業安定法」で定める料金等を超えて金銭等を収受すると労働基準法第6条違反になります。
ここでいう「利益」とは金銭だけではなく、有形無形も問いません。また使用者から得る利益だけでなく、労働者や第三者から得る利益も含まれます。
労働者派遣は「他人の就業に介入して」いるわけではないので労働基準法第6条違反にはなりません。
もう少し詳しく説明すると労働者と派遣元事業主は雇用関係にあります。労働者と派遣先事業主の間には雇用関係はないので派遣元事業主が労働者の就業に介入したことにはならないのです。
☆職業紹介:求人や求職の申し込みを受け、求人者と求職者の間の雇用関係成立のあっせんをすること。