労働基準法では国籍や性別などによって労働者を差別的に取扱うことを禁止しています。
今回は労働基準法第3条と第4条についてご紹介します。
「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。」
ここでは読んで字のごとく労働者の「国籍」「信条」「社会的身分」によって労働条件について差別を禁止しています。
この条文では以上の3つを限定して労働条件について差別を禁止しているのでこれら以外の理由で労働条件について差別しても労働基準法第3条違反にはなりません。
「信条」とは特定の宗教的信念や政治的信念のことです。
また、「社会的身分」とは生来的な地位のことです。正社員とパートタイマーなどの職制上の地位の違いは社会的身分ではありませんので労働条件に違いがあっても労働基準法第3条違反にはなりません。
ここでいう「労働条件」は、職場における労働者のすべての待遇をいいますので、賃金、労働時間、解雇、災害補償、安全衛生、寄宿舎等に関する条件も含まれます。
しかし、これらの労働条件に「採用」は含まれないため、採用段階で「国籍」「信条」「社会的身分」によって採用の有無を決めることは労働基準法第3条違反にはなりません。
次に労働基準法第4条を見てみましょう。
「使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならない。」
労働基準法第4条では性別による労働条件の差別的取扱いを禁止していますが、この条文で禁止されているのは労働条件一般ではなく、「賃金について」のみです。
この条文でいう「賃金」は賃金額だけではなく、賃金体系や賃金形態についても含まれますが、個人的な能力差によって賃金額に違いが出る場合は労働基準法第4条違反にはなりません。
あくまでも「女性であること理由として」差別が行われることを禁止しています。
また、賃金以外の労働条件については「男女雇用機会均等法」という別の法律によって性別による差別的な取扱いを禁止しています。
☆賃金体系:基本給と諸手当の体系のこと。例)基本給+職種給等
☆賃金形態:賃金の算出及び支払いの単位のこと。時間給、日給、月給等