健康保険の傷病手当金〜併給調整について〜

傷病手当金の併給調整

健康保険の傷病手当金は、その目的が療養中の生活の補償であることから、以下の場合には支給が調整されます。順番に見ていきましょう。

報酬との調整

報酬を受ける場合には傷病手当金は支給されない

疾病にかかり、又は負傷した場合において報酬の全部又は一部を受けることができる者に対しては、これを受けることができる期間は、傷病手当金は支給されません。

つまり、傷病手当金の支給要件を満たしていても、その期間に給料が支払われる場合には傷病手当金は支給されないということです。

例えば、月給制の人が疾病によって10日間、仕事を休んだとしても、その月の給料が日割りで減額されることなく満額支給されるのであれば、傷病手当金は支給されません。

傷病手当金よりも報酬が少ない場合には差額を支給

ただし、その受けることができる報酬額が健康保険法99条2項の規定により算定される傷病手当金の額より少ないときは、原則としてその差額が支給されます。

例えば傷病手当金の日額が1万円で、報酬の日額が8千円であれば、差額の2千円が傷病手当金として支給されるということです。

出産手当金との調整

傷病手当金より出産手当金を優先して支給

出産手当金を支給する場合においては、その期間、傷病手当金は支給されません。

傷病手当金よりも出産手当金が少ない場合には差額を支給

ただし、その受けることができる出産手当金の額が健康保険法第99条2項の規定により算定される傷病手当金の額より少ないときは、その差額が支給されます。

障害厚生年金との調整

同一事由なら傷病手当金より障害厚生年金を優先して支給

傷病手当金の支給を受けるべき者が、同一の疾病又は負傷及びこれにより発した疾病について厚生年金保険法による障害厚生年金の支給を受けることができるときは、傷病手当金は支給されません。

傷病手当金よりも障害厚生年金✕1/360が少ない場合には差額を支給

ただし、その受けることができる障害厚生年金の額を360で除して得た額(1円未満の端数は切り捨て)が傷病手当金の額よりも少ない時は、その差額が支給されます。

障害手当金との調整

同一事由なら仮に傷病手当金を受けた場合の総額が障害手当金の額に達するまでは支給されない

傷病手当金の支給を受けるべき者が同一の疾病又は負傷及びこれにより発した疾病につき構成せ年金保険法による障害手当金の支給を受けることができるときは、当該障害手当金の支給を受けることとなった日からその者がその日以後に傷病手当金の支給を受けるとする場合の傷病手当金額の合計額が当該障害手当金の額に達するに至る日までの間、傷病手当金は、支給されません。

老齢退職年金給付との調整

傷病手当金が資格喪失後の継続給付の場合には老齢退職年金給付が優先

被保険者の資格を喪失した後に傷病手当金の継続給付を受けている者が、老齢退職年金給付の支給を受けることができるときは、傷病手当金は支給されません。

傷病手当金の継続給付を受けている者が日雇特例被保険者又は日雇特例被保険者であった者の場合は傷病手当金は支給されます。

また、老齢退職年金給付とは老齢厚生年金や老齢基礎年金等の老齢又は退職を支給事由とする年金給付であって政令で定めるもののことです。

傷病手当金よりも老齢退職年金給付✕1/360が少ない場合には差額を支給

ただし、その受けることができる老齢退職年金給付の額を360で除して得た額(1円未満の端数切り捨て)が傷病手当金の額よりも少ないときには、その差額が支給されます。

労災保険の休業補償給付との調整

休業補償給付が優先※差額支給もなし

労働者災害補償保険法による休業補償給付を受給している健康保険の被保険者が業務外の事由による傷病によっても労務不能となった場合には、休業補償給付の額が傷病手当金の額に達しないときにおける差額部分に係るものを除き、傷病手当金は支給されません。