健康保険における療養費とは
健康保険の給付は、「現物給付」が原則です。
しかし、やむを得ない事情によって原則通りの「現物支給」が受けられない場合もあります。
このような場合に、被保険者が一旦医療費を立て替え払いして、後から申請することによって「現金給付」を受けることが出る制度を療養費といいます。
療養費の支給要件
療養費は次の場合に、「療養の給付・入院時食事療養費・入院時生活療養費・保険外併用療養費」の支給に代えて支給されます。
- 保険者が療養の給付等を行なうことが困難であると認める場合。
- 被保険者が保険医療機関等以外の病院、診療所、薬局その他の者から診療、薬剤の支給、手当を受けた場合において、保険者がやむを得ないものと認める場合。
- 捻挫・脱臼等のときに柔道整復師の施術を受けた場合。(現に医師が診察中の場合には、応急措置の場合を除いて医師の同意が必要です。)
- 生血を購入した場合。(保存血の場合は療養の給付として現物給付が行なわれます。)
- コルセット類、義眼、義手義足を購入した場合。
以上のどれかの場合に療養費が支給されます。上記の1と2は下記詳細をご説明します。
また、4の生血と保存血の扱いの違いについては社会保険労務士試験でよく問われる内容なので受験予定の方は是非覚えておいて下さい。
1、保険者が療養の給付等を行なうことが困難であると認める場合
これは主に次のような場合が該当します。
- 山間僻地などで近くに保険医療機関がない場合。
- 事業主が資格取得届の提出を怠った場合。
- 旅先で被保険者証を持っていないため、自費で診療を受けた場合。
海外で診療を受けた場合は?
海外の病院等で診療を受けた場合も療養費の支給対象になります。
手続きとしては海外にいる被保険者からの支給申請は、事業主を経由して行ない、療養費の支給は事業主が代理受領することになります。
よって保険者から海外への送金は行なわれません。
また、支給額の換算に用いる邦貨換算率は、当該療養費の支給決定日の外国為替換算率を用いることになります。
2、被保険者が保険医療機関等以外の病院、診療所、薬局その他の者から診療、薬剤の支給、手当を受けた場合において、保険者がやむを得ないものと認める場合
これは、病状が急迫した状態で保険医療機関等を探す余裕がなかった場合や負傷して搬送された病院が保険医療機関等ではなかった場合が該当します。
療養費の支給額
本来、療養の給付等として現物給付されるべきであった額が現金給付されます。
この支給額は療養について算定した額から一部負担金相当額を控除した額等を基準として保険者が定めるものです。よって、その額が一律に定められているわけではありません。