今回は健康保険制度等、我が国の公的医療保険の歴史をご紹介します。
健康保険法は大正11年に制定されました。
健康保険はドイツの疾病保険法をモデルとして制定された我が国初の社会保険制度でした。当初は疾病保険だけでなく、業務上災害も給付の対象となっていました。
業務上災害の給付は昭和22年に労働者災害補償保険法の成立によって健康保険から除かれました。
当初、健康保険が適用されたのは次の2パターンです。
つまり、当初、健康保険が適用されたのは一部の被用者だったということです。それでは健康保険が適用されない人たちの公的医療保険はどうなっていたのでしょうか?
健康保険法の制定から16年遅れて、昭和13年に国民健康保険法が制定されました。
国民健康保険は健康保険が適用されない農業従事者や自営業者等が加入する公的医療保険制度で、当初は組合方式で制度の運用をしていましたがあまり普及しませんでした。
さらに敗戦後の混乱によって多くの組合が運営を継続できなくなってしまったため、長らく農業従事者や自営業者等が加入する公的医療保険がない状態が続きました。
その後、国民健康保険法制定から20年、敗戦から13年を経た昭和33年に国民健康保険法が全面改正され、昭和36年までに全ての市町村で市町村運営方式の国民健康保険を行うことになりました。
このことによって被用者は健康保険、農業従事者や自営業者等は国民健康保険に加入できるようになりました。
全ての国民が必ず何らかの公的医療保険の適用を受ける我が国の「国民皆保険体制」の実現です。
昭和33~36年は岸信介政権から池田勇人政権の時代であり、我が国が高度経済成長期に入っていくところでした。
市町村運営方式で国民皆保険体制を実現した国民健康保険制度ですが、少子高齢化に伴い、市町村ごとの年齢層の違い等によって安定運営が難しくなってきたこともあり、平成30年4月から都道府県が財政運営の責任主体となりました。
また少子高齢化の関係の話を続けると、公的医療保険の保険者によって加入している高齢者の人数が異なることから、特定の保険者に負担がかかりすぎないようにするために平成18年に高齢者の医療の確保に関する法律が制定されました。
このことによって75歳以上の高齢者等は後期高齢者医療制度に加入することとなりました。
後期高齢者医療制度も都道府県単位の後期高齢者医療広域連合が制度の運営をしています。
公的医療保険制度の適用は大まかに記すと上記のようになります(生活保護等の例外を除く)
一口に「健康保険」といってもそれにはいくつかの異なった制度があるのです。